大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

大阪高等裁判所 昭和43年(ネ)1781号 判決 1973年3月22日

主文

本件各控訴を棄却する。

控訴費用は第一審原告、第一審参加人の負担とする。

事実

第一審参加人は「原判決中第一審参加人の敗訴部分を取消す。第一審被告は、第一審参加人が原判決添付目録記載の溜池(本件溜池)につき所有権を有することを確認する。第一審被告の第一審参加人に対する反訴請求を棄却する。訴訟費用は第一、二審とも第一審被告の負担とする。」との判決を求め、第一審被告は「本件控訴を棄却する。控訴費用は第一審参加人の負担とする。」との判決を求めた。

当事者双方の主張および証拠の関係は、第一審参加人において第一審原告本人尋問の結果を援用したほか、原判決事実摘示と同一であるから、これを引用する。ただし、原判決六枚目表一〇、一一行目の「仮に、黙示の意思表示がなされた、との主張としても、」を「仮に、これにより公物設置の黙示の意思表示がなされたものと認定されたとしても、」と訂正する。

理由

一、本件記録によれば、本件訴訟は、第一審原告が本件溜池の所有権を取得したことを主張して第一審被告に対し、右溜池について所有権移転登記手続を求めたところ、第一審被告が右溜池は自己の所有であると抗争し、第一審原告に対する反訴として右溜池の所有権確認およびその明渡を求め、ついで第一審参加人が第一審原告より右溜池を買受けその所有権を取得したことを主張したうえ、第一審原、被告の双方を相手方として民訴法七一条に基つく参加を申立て、第一審原告に対しては右溜池の所有権移転登記手続を、第一審被告に対しては右溜池の所有権確認をそれぞれ求め、更に第一審被告が第一審参加人に対する反訴として右溜池の所有権確認およびその明渡を求めたものであること、しかして、原審は、第一審原告、第一審参加人の第一審被告に対する各請求を棄却し、第一審被告の第一審原告、第一審参加人に対する反訴各請求および第一審参加人の第一審原告に対する請求をいずれも認容する旨の判決をしたため、第一審参加人のみが第一審被告を相手方として本件控訴を提起したことが認められる。

ところで、民訴法七一条の参加による訴訟は、原告、被告、参加人の三当事者間に存する同一の権利関係に関する紛争を一つの訴訟手続によつて一挙に矛盾牴触することなく解決する訴訟形態であつて、右三当事者間で互いにてい立牽制しあう関係に置き、一つの判決により訴訟の目的を全員につき合一にのみ確定することを目的とするものであるから、本案判決をするときは、右三当事者を判決の名宛人とする一個の終局判決のみが許され、右当事者の一部に関する判決をすることも、また残余の者に関する追加判決をすることも許されない。したがつて、本件訴訟において、第一審参加人のみが控訴の申立をした場合にも、民訴法六二条の準用により、原判決全部の確定が遮断されて事件の全部が控訴審に移審し、第一審参加人、第一審原告、第一審被告間の各請求はすべて当然に控訴審の審判の対象となり、第一審原、被告はいずれも控訴審における当事者の地位を取得するものというべきである。そして、本件では、第一審参加人の控訴は第一審被告のみを相手方とし、第一審原告を相手方としていないのであるが、本件訴訟の内容および経過に鑑みると、第一審原告は第一審参加人と実質上利害を同じくしているものと認められるから、第一審原告は第一審参加人と同様第一審被告との間の各請求につき控訴人の地位にたつものといわなければならない。

二、当裁判所も、第一審参加人の第一審被告に対する本件溜池の所有権確認の請求、第一審原告の第一審被告に対する右溜池の所有権移転登記の請求をいずれも失当として棄却し、第一審参加人の第一審原告、第一審被告に対する右溜池の所有権確認およびその明渡の各反訴請求、第一審参加人の第一審原告に対する右溜池の所有権移転登記の請求をいずれも正当として認容すべきものと判断するが、その理由は、つぎのとおり付加訂正するほかは、原判決理由記載の判断説示と同一であるから、これを引用する。

(一)、原判決一四枚目表九行目の「内第一号証」のつぎに「参加人本人尋問の結果」を加える。

(二)、同一五枚目裏四行目の「認めうるけれども、右事実をもつてしては、」を「認めうる。しかし証人藤田信和の証言により成立を認めうる乙第三号証の一、二、第四号証、同証人の証言を総合すると、藤田捨吉はその頃本件溜池を事実上管理していた上田常七に本件溜池の使用料を支払つていた事実が認められるから、右認定のとおり音吉が本件溜池で養魚しこれを占有していた事実をもつてしても、」と訂正する。

(三)、同一五枚目裏九行目の「証人山口光太郎の証言により成立を認めうる、」を「成立に争いのない」と訂正する。

(四)、同一六枚目表一一行目「その後、」のつぎに「本件溜池は被告の所有に属することを認めたうえ、」を加える。

(五)、同一七枚目裏一〇行目の「右認定の事実から、」を「右認定の事実に、証人藤田信和、同西村吉一の各証言を合わせ考えると、」と訂正する。

(六)、同一八枚目表六行目の「ことを推認しうる。」を「ことが認められ、前掲乙第五号証の記載、証人岡田キヨ子、同林定之の各証言中右認定に反する部分は措信しがたく、他に右認定を覆えすに足る証拠はない。」と訂正する。

三、以上によれば、第一審原告、第一審参加人の各請求を棄却し、第一審被告の反訴各請求を認容した原判決は相当であるから、第一審参加人、第一審原告の本件各控訴を棄却することとし、控訴の負担について民訴法八九条、九三条を適用して主文のとおり判決する。

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例